ポエムです。
自社パッケージ製品のクラウド版を提供して1ヶ月で利益が出たので、どんな感じだったのかを時系列で雑に書いていきます。
前提
- 従業員が片手で足りる人数の零細企業
- パッケージ製品で充分な利益を出している
パッケージ製品のクラウド化 (2022 年 1 月)
自社では WebRTC に関連するミドルウェアのパッケージ製品を提供しており、これが主力商品となっています。パッケージ製品ということで運用はお客様にしてもらいます。閉じた環境でも使えるため多くのお客様に使って頂いています。
パッケージ製品の開発が落ち着いてきたこともあり、クラウド化としてとして提供することにしました。
目的としてはパッケージ運用したくないという企業の取り込みです。またパッケージは年間ライセンスですが、クラウド版は月額利用モデルにすることで、収入の安定化です。
無料のサービスで検証 (2022 年 1–3 月)
まずやったことは、作ろうとしているサービスの似たような仕組みを「自社製品を無料で検証できるサービス」で実験してみるということでした。自社では自社のパッケージ製品を無料で検証できるサービスを提供しています。多くはないですがいろいろな方に使って頂いております。
このサービスをクラウド版の検証場所として色々実現したいことを試しました。認証の仕組みやらログ周りなどなど。利用する技術の検証もここでしました。無料かつ無保証で提供していることもあり、やりたい放題です。
自社パッケージの構成や監視などもここで検証しました。約 3ヶ月間程度検証し、問題なくクラウド版を提供できそうだと手応えを感じたので、クラウド版の開発に移りました。
徹底的な低コスト (2022 年 4–5 月)
パッケージ版では先発でしたが、クラウドサービスとしてはかなり出遅れています。そのため「価格面」での優位度を取ることにしました。
そもそもクラウド化する製品自体は充分な実績がある製品なので、価格にこだわりました。
価格を安くするといっても、利益が出ないようでは意味がありません。利益を十分に出しつつ安く提供する。これを実現するためにパッケージ版では存在しない「日々かかる費用」を下げる技術選定をしました。
- 主要クラウドサービスを採用しない
- できるだけ自前でやる
テーマは二つです。主要クラウドサービスは普通に高いので採用せずに、ベアメタルサーバー (DataPacket) と格安なクラウドサービス (Vultr と Linode) を利用することにしました。
さらに監視なども全てサービスを利用せずに自前で構築することにしました。ちなみに監視ツールには VictroiaMetrics と Grafana を採用しています。
少人数での開発と運用
メイン開発者は 1 人です。プロジェクトに関わっている人自体は 5 名くらいいますが、主に検証がメインです。フロントエンドからバックエンド、インフラ、運用全て 1 人でまかなえるような仕組みを意識しました。
実績のあるパッケージ製品を「簡単に使えるようにする」サービスの提供なので機能を作り込む必要がないというのも少人数でなんとかなります。
自分はビジネスやシステムの設計を担当しました。
機能は最低限
あれもこれもというのではなく、とにかく自社製品を運用せずに利用できる「だけ」という方針で開発を進めました。
機能は後からいくらでも追加できますが、サービスが提供されるタイミングは早ければ早いほうが良いからです。
アーリーアクセスの提供 (2022 年 6–9 月)
サービス開始前に 4 ヶ月のアーリーアクセスを無料で提供することにしました。あせって正式版を公開したり利益を上げるよりも、まずは無料で使ってもらえるアーリーアダプターを集める事を優先しました。
思った以上の企業がアーリーアクセスに参加してくれて、フィードバックもいただけました。実際に運用してみて色々な課題があることがわかりました。
1 から書き直し (2022 年 10–11 月)
課題を解決するため 2 ヶ月後のリリースに向けて 1 から書き直すことにしました。いろいろこねくり回すより最初から書き直した方が早いと判断しました。
書き直しすることでコードも良くなりますし、仕組み自体も良くなります。強くてニューゲームは本当にオススメです。
サービス開始 (2022 年 12 月)
11/30 に募集開始、12/1 にサービス開始しました。開始と同時に複数のお客様から契約したいとお問い合わせを頂きました。パッケージ製品の運用はしたくないけど使いたい、というお客様が意外にも多いことがわかりました。
開始直後にいくつかいけてないバグも見つかったりしましたが、あせらず対応しました。
ベアメタルサーバーのハードウェア変更
思った以上に利用頂くお客様が多くなってきたことから、年末に思い切って AMD EPYC のお高いハードウェアに変更。少なくとも 3 年は戦えるハードウェアにしました。3 時間の停止メンテナンスでなんとか実現しました。今後は停止メンテナンスを一切やらないつもりです。
利用企業が増えていく (2023 年 1 月)
今回のクラウド版は「利用時間」や「転送量」といった一般的な課金方式を一切とらず「繋ぎっぱなし」にしても定額にするというニッチな仕組みを狙いました。
そもそも儲からないモデルというのもありますが、世界中でも競合というものはほぼ存在しません。ありがたいことにお客様も徐々に増えていきました。
利益が出る
もともと低コストでサービスを開発、運用していることもあり、サービス開始1ヶ月で月々にかかるランニングコストを越える売上が出てしまいました。つまり、利益が出てしまいました。
営業なし、宣伝ほぼなし、開発 1 名、大手クラウド利用なしという今の時代とは逆行しているやりかたと見えますが、コストをかけるべきはそこではなく製品の質だと思っているので、そこは技術で解決できればと思っています。
このまま利用企業が増えれば、よりいろいろな投資ができるようになりそうです。パッケージ製品も安定して売上をだしてくれており、クラウド版と二枚看板になっていきそうです。
まとめと今後
とにかく安く作って安く提供する、ただし質は最高のものを。という方針でやっていってますが、うまくいったようです。
今後も低価格路線は変えませんが、より使ってもらえるような機能を提供できればと思っています。
配信周りに懸念は一切ないため、今後は録画や録画合成といった他社が取り組みにくい部分に投資をしていきます。
もし興味があれば、お問い合わせください。