ビジネスなどについて振り返ります。
前提
- IT 系零細企業でソフトウェアのパッケージ製品とそのクラウド版を販売
- 主力製品は音声や映像、データをリアルタイムに配信するミドルウェア
自社パッケージ製品
今年はとても大きな変更を二つ行った。本格的な分散システム化と主力機能である録画機能の新しいバージョンの提供。
本格的な分散システム化
分散システム化は数年前から取り組んでいたが、あくまで冗長化という意味での分散システムで、スケールアウトを目的とはしていなかった。
リアルタイム配信技術でのスケールアウトは片方向であれば、それほど難しくないが、双方向やどのノード(サーバー)に接続しても同じルームに参加できるといったスケールアウトの仕組みを実現するのは、とてもとても大変だ。
外部データベースに状態を持つのがほとんどだが、パッケージ製品であればそうもいかないので、Raft を利用した分散システムを本格的に導入し、パッケージ製品単体でのスケールアウトの仕組みを実現できる事を目標にしている。
2024 年前半にスケールアウト可能な機能を搭載して提供する。
新しい録画機能
リアルタイムな音声や映像配信における録画機能はとても難しい。ただ、録画機能は配信サーバーにとっては必須の機能と言える。
多くは外部に1クライアントとして録画クライアントを立てるというパターンだが時雨堂ではミドルウェアが責任を持って録画を行うという戦略をとっている。
この録画機能を新機能として一新した、ただし既存もそのまま 2 年は利用でき、さらに移行しやすいよう新しい録画も、既存の録画もルームが違えば同時に利用できるようにした。
自社パッケージ製品のクラウド版
2022 年 12 月にリリースした自社パッケージ製品のクラウド版がほぼ宣伝をしていないにもかかわらず開始すぐに黒字化できたのが大きかった。その後は少しずつ顧客が増えてきており、とても順調である。
とにかくパッケージ製品をできるだけそのままで利用できるを意識した。クラウド版へのロックインをせず、いつでもパッケージに切り替えられる事はとても重要だと思っている。
パッケージ製品に切り替え、自社運用することでコストを下げるという選択肢は常に提供し続けたい。
来年はは公開している OSS ツールのクラウド版を充実させていきたい。
自社製品 OSS
フルタイムでの自社 OSS お手伝いが増えた。
Python SDK
お手伝いしてくれている方からのアドバイスにより生まれた Python SDK は思った以上に使い勝手が良く、自社パッケージ製品などの E2E テストにも採用している。PyPI への登録が本当に大変だった … 。
C SDK
新しくほとんどの SDK で利用している Google が開発しているライブラリではなく、OBS に採用されたりしている個人が開発している軽量なライブラリを利用した SDK も開発をしはじめた。
当たり前だがビルドが楽で、さらに自分たちの思った機能を好き放題できるのは良い。
来年もとにかくしっかりメンテナンスをしていく。その上でドキュメントやテストを充実させていく。
ビジネスモデル
パッケージ製品の年間ライセンス販売に加え、クラウド製品による毎月の売上げという新しい軸が増えたのはかなり大きい。
さらに自社製品 OSS への優先実装という「もともとロードマップにはあるけどリソース的に余裕がないから後回しにしている機能」を有償で前倒しにする対応も行った。思った以上に上手く回っていて時雨堂の OSS は優先実装で欲しい機能を前倒しできるという認識が広まっているような気がする。
AGPLv3 か BSLv1.1 による自社パッケージ製品の機能制限が多く、1 から書いた OSS 版の提供というのを考えていたのだが、ビジネス的にいい案が思いつかなかったので当面はやらない方針。
基本的に自社製品以外の仕事は受けていないが、ずっとお手伝いしている雑談顧問以外に Twitch のお手伝いをしたが、海外との契約は大変だったが、良い体験ができた。
売上と利益
前期(9 月決算)は今までで売上/利益ともに最大になった。今期の第一四半期も前期と比較して売上が約 150%を達成しており、かなり順調といっていい。
ただ、営業してるわけでもなく、ミドルウェア製品の宿命である「利用しているサービスがうまくいかないと契約も終わる」というのは常につきまとうこともあり、気を引き締めていきたい。
ちなみに売上や利益の目標は特にないので、行き当たりばったり。
採用
フルタイムでの自社製品 OSS お手伝いを 1 名増やしたいなと思っている。技術にこだわりはなく、何でもコツコツやれるいい人、待ってます。
スポンサーと寄付
前期は約 1500 万円をスポンサーと寄付に使った。OpenSSL と Let’s Encrypt へのスポンサーは今後も継続していきたい。
11 月からは始めた Biome へのゴールドスポンサーである 月 1,000 ドルは時雨堂にとってかなりのチャレンジ。Linter/Formatter で稼ぐのはとても難しい、ただ Linter/Formatter の効果は開発においては絶大だと思う。
利用している企業がスポンサーという立場で支えていくのが大事。Biome は関わっている日本人が多く、発表などでスポンサーの名前を出してくれるのもとても良い。
今年は約 3000 万円くらいを考えているが、こればっかりは売上/利益に依存するのでなんとも。